化粧品卸の煩雑な業務の効率化とスピードアップに貢献 マーケティングにも活用可能なシステム
タイの複雑な会計を理解しているシステムだった
弊社は5年前にタイに進出しました。当時はまだ事業規模が小さく、この先どうなるかもわからなかったので、受発注や経理業務等についてはExcelで対応していました。
しかし、タイは日本と比べて帳票関係が非常に複雑で、請求書もコピーして複数枚の綴りで出力しなくてはなりません。弊社は扱い商品点数が多く、お客様の条件も買い取りあり、委託ありとさまざま。そのため管理が煩雑化し、手作業でこなすとミスが発生していました。また、タイでは月次で会計を締めるため、作業のスピードが追いつかないという問題もありました。
こうした問題を解決しようと、2015年の7月に導入したのが東計タイランドさんの基幹業務システムです。日本で弊社と東計電算さんとはかねてからシステムを通じておつきあいがあったため、タイにも進出されていると聞き、問い合わせをしたのがきっかけです。
システム導入の際には、タイローカルのシステムのほか、他の日系企業のシステムも検討していました。しかし、ローカルのシステムはタイの基準で構築されていて、カスタマイズできず、パッケージのままま使うしかありません。インボイスを作る機能はあっても、データの解析には使えず、完成度も日本のレベルには到底及びませんでした。
サーバの管理が雑で、調子が悪くならないとメンテナンスをしないのも不安要素の一つでしたね。もしその会社に何かあったら、弊社のデータが飛んでしまう可能性が否定できないからです。
他の日系の会社のシステムはといえば、タイの会計をしっかりと理解しているところがなかった。「これから一緒に作らせてください」と言われたこともあります(笑)。
その点、東計タイランドさんのシステムは、タイの会計を理解した上で構築されていました。カスタマイズにもきちんと対応していただける。それが導入の決め手になりました。
システム導入後は大幅に効率がアップ
カスタマイズにあたって一番苦労したのは、ベースを作ることです。商品数や得意先、取引条件が多岐にわたるため、どこまでルールを決め統一するのか、どこまでをマニュアルとして対応するのか、その線引きに1年ぐらいかかったでしょうか。
一口に取引先といっても、取引条件はそれぞれです。日本と違って、同じ委託販売でも、伝票の作り方や請求書の作り方など、会社によって求められる内容が違うんですね。例えば、請求書を税込み表記にしてほしいと要望される会社もあれば、税抜き表記でなければという会社もある。「得意先ごとに持っている商品の番号をインボイスに入れてほしい」というリクエストにも対応する必要がありました。
オーダーは日々入ってきますから、それを入力して請求書を発行するプロセスに時間がかかってしまっては、システム化する意味がありません。マスターの段階で漏れがないように、商品条件や取引条件を反映させるのは大変でした。
しかし、苦労した甲斐があり、システム導入後は効率が大幅にアップしました。実際にシステムにタッチしているタイ人スタッフは、当初は慣れずに手間取っていましたが、いまでは作業を効率的に進められるようになっています。作業の工数が減り、商品を探しだす手間がいらなくなった効果は大きいですね。
以前は、Excelにフィルターをかけていちいち商品を検索しては、コピーして数字を入力していましたが、いまはJANコードを入れればすぐに商品が出てくる。そこに数量を入れるだけでいいので、作業スピードは圧倒的に早くなりました。
取引先を拡大できるメリットも
この基幹業務システムは、倉庫のシステムとも連動しています。実は、東計タイランドさんのシステムを入れる前に、倉庫や物流業務を委託している日系の企業に依頼して、それまで週次でもらっていたデータをオートマチックに夜中に送っていただくよう、依頼しました。
ありがたいことに対応していただき、いまでは受発注と倉庫業務が連動する形で動いています。以前は、オーダーが入ると、いったん倉庫に投げて在庫があるかどうかオーダーバックをもらっていたのですが、もうその必要はありません。業務の流れは本当にスムーズになりました。
また、会計事務所とのやりとりもずいぶんと効率化しました。以前は、データが数週間分たまったら、その都度、会計事務所に紙ベースで送っていましたが、手打ちなのでミスが出ていた。しかし、現在はオンラインでデータを共有できているので、ミスが起きても、お互いにその場でデータを見ながら確認できます。
取引先を広げることができたのも、システム導入のメリットです。従来はどこに何個在庫があるのか把握できなかったので、委託で取引をしたいと言われても、在庫や伝票の管理がネックとなり、二の足を踏むことが多かったんです。煩雑な手間が予想されるところとは取引できず、メジャーな上位何十社としか取引ができませんでした。
しかし、今なら伝票が細かく分かれていても対応可能です。日本から本格的に進出し、店舗展開をスタートした大手ドラッグストアとの取引も、この基幹業務システムがあったから実現したようなもの。3年前からその会社の輸入代行を手がけ、テスト販売を行ってきましたが、少量で輸入販売していたため、店頭での在庫や売り上げがわかりづらいという問題を抱えていました。いまのシステムがなければ、今回の進出には到底対応できなかったと思います。
マーケティングと新規事業に活用
今後は、集まったデータをマーケティングに活用していきたいと考えています。何がどこで何個売れているのかを肌感覚ではなく数字として把握し、その上でマーケティングをかける。そして、売り場に提案するだけでなく、メーカーにもフィードバックしていきます。
タイでは、ハンドクリームが売れたり、ボディクリームやフェイスマスクが売れたり、ジェルクリームが非常に好調だったりと、日本側の予想とは異なる商品が売れている。データを駆使して「こういうモノが売れるので、ぜひこういうモノを作りましょう」とメーカーに提案していく計画です。
2016年4月下旬からは、JTBコミュニケーションと合同で、弊社の取り扱い商品1000点を販売するwebショップ「TOKYO BUZZ」を開きます。マーケティングの場として位置づけ、弊社が以前からバンコク市内で運営しているアンテナショップ「TOKYO BUZZ」のオンライン版です。
日々の売り上げデータをシステム側にインポートできるよう、いま東計タイランドさんと作業を進めている最中です。データを一括で取り込み、一括で請求書にあげ、注文から決済、物流までをシステムの中で動かしていく。こうした取り組みが可能なのも、前提として基幹業務システムが動いているからです。今後も導入したシステムを生かし、裏側の集計やデータの解析、そして新規事業に積極的に活用していきたいですね。
商号 | 森友通商株式会社 |
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事業内容 | 石鹸洗剤等日用品雑貨、化粧の販売、酒類の販不動産賃貸業 |
創業 | 安政元年(1854年) |
資本金 | 8,222万円 |
従業員 | 約50名 |